21代目社長と社員でつくる! 400年の発酵屋ブログ
2023.4.21

長く置けば「良い味噌」になるか?

 

「三年味噌はありますか?」というお問い合わせをいただくことがある。

当社には特別な加工用以外の一般向けのお味噌としては販売していないのでその旨をお伝えすると、ガッカリされ、時には、「オタクは本物を扱わないのね」「ちゃんとしたお味噌屋ではないのね」といった印象をもたれる方もおられる。「味噌は古ければ古いほど値打ちがある」「または美味しい」「本物である」というイメージがあるが、それはただの迷信に過ぎない。

 

味噌が発酵熟成するにはある程度の時間が掛かるには違いないが、その長さを決めるのは原料配合と熟成環境である。現代の味噌は一般的に低食塩で糀歩合が高い傾向である。さらに冬でも温釀庫などで一定の発酵環境があるのが普通である。それだと最短では一ヶ月から六ヶ月程度でも立派な味噌ができる。

立派な味噌とは、糀の酵素がお米のデンプンや大豆のたんぱく質を分解して旨味を作り出し、さらに乳酸菌や酵母なども充分発酵し、それらがつくり出した成分が味噌の中で混ざり合う熟成という段階もある程度すすんで、味噌らしい良い風味を造り出しているということである。

最初の糀による分解と微生物による主発酵という段階は、文字通り生き物が主役の「発酵の晴れ舞台」ともいえるところだが、生き物には自ずと寿命があり2~3ヶ月程度でピークを過ぎて弱ってくる。その後は主に熟成となり、味噌中の成分の混合化合重合といういわば物理的化学的反応がゆっくりと進む。香りが変化し味噌の色も赤みが増すなどの変化が見られる段階になる。無機的な反応なのでピークというものはなくいつまででも永遠に続く。その環境を整えながら程よいところで「完成」と判断するのは人間の力である。

味噌の熟成は神秘的だが、現在の仕込み規格の味噌で2年とか3年以上自然環境で熟成(放置)をさせれば、一般的には味も風味も栄養価値も低下して「過熟成」と評価されるものになってしまう。

 

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